龍馬の万人に与える魅力への驚き。
それがずっと続いているんです。
この広い太平洋に導かれて。
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実は、それほど龍馬に強い関心を抱いていたわけではなかったんです。
大学生の頃には「竜馬がゆく」も読んではいましたし、
土佐の生まれですから、
龍馬のことはいくらか知っている程度でした。
勤めていた新聞社を退職後、新彊(しんきょう)ウイグル地区の
新彊大学に2年留学、
その後帰国した折に「館長をやってみないか」と
お話をいただいたのですが、
この龍馬記念館の太平洋を眺める部屋を見た時に、
私が好きで年に数回訪れているタクラマカン砂漠に
そっくりだと感じました。
「この太平洋の広さはシルクロードと同じだ。
砂漠は土色、海はブルー。あぁ、色が違うだけだなぁ」と。
この景色をゆっくり眺めながら、
「よし、龍馬の勉強を始めよう。ゆっくりやろう!」と
館長の任を引き受けることを決意したんです。
来館者の熱意に、龍馬の魅力を教えられた。
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連日3,000人以上もの来館者があったんです。
いちばん驚いたのが、若い人がとにかく多かったこと。
中には、茶色の髪にタンクトップに草履姿と、
まるでそのまま海辺からやってきたような恰好の若者や
カップルもいましたけど、なんというかなぁ、みんな、素朴なんですね。
5メートルもあるような龍馬の手紙を、熱心に、食い入るように読んでいるんです。
その真剣さ、熱意に負けました。
「これはただごとじゃないぞ」
「ゆっくりしていられない!何かしなければ!」と、
この熱意に応えるべきだと感じました。
今も日常的に龍馬の手紙に目を通したり勉強を続けていますが、
知識・情報は後から入るけど、まず最初に興味を持ったのは若者の熱意ですね。
なぜ龍馬にはこれだけの人を惹きつける力があるか。
館の学芸員から龍馬の魅力を語られて、というわけではないんです。
今では龍馬について、かなり詳しいですよ(笑)
ここを訪れてくれる人の熱意、情熱といったものに
龍馬の魅力を教えられたという感じでしょうか。
歴史上の人物で、いまどきここまで愛される人も珍しいんじゃないか。
きっと自分が知らない魅力があるはず。そう思いました。
ひとりひとり、それぞれの龍馬がある。
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それらと向き合う来館者の顔を見ていると、
みんなそれぞれの龍馬を思い描いているんだなぁと感じます。
みんなが来て、龍馬と話をして、
話すだけじゃなく、あらためて勇気をもらったり、
何かを決断したりして帰路につく。
電話のような個人回線で話しているような魅力があるんでしょうね。
その、万人に与える魅力みたいなものを感じて、
ますます龍馬のファンになったというか、その凄さに驚いています。
それがずっと続いているんです。
龍馬を愛する人たちの熱意にどう応えるべきかを考え続けて、
企画展をうったり、改装したりしています。
いまの世の中、政治、経済、社会が不安定で混沌としています。
若い人に「しっかりしろ!」などという人もいますが、
ここにきて、龍馬の手紙を真剣に読んでいる若者はしっかりしていますよ。
それをみて、こちらが元気をもらっているのですから。
なんかやってくれそうな気がする、そう感じるんですね。
だからこそ、その人らに応えるべきだと、
そう言う人の情熱がつくりあげる場所、
龍馬に思いを寄せている人達がつくっている場所が、この龍馬記念館。
そう思っていただけると本当にうれしいですね。
龍馬街道の成長も、楽しみにしています。
平成二十一年 七月
高知県立坂本龍馬記念館 館長 森 健志郎